
傷病手当金をもらえない8つのケース|支給要件や受給額の目安も解説
病気やケガで長期休業する場合に、経済面での負担を軽減してくれる制度が傷病手当金です。
休業中も給与の約3分の2が保証されるため、休業後すぐに生活が困窮する事態には陥りにくいでしょう。
しかし、傷病手当金をもらえないケースもあるため、制度の内容を正しく理解していないと、本来受け取れるはずの給付を受け取れない可能性があります。
そこで本記事では、傷病手当金をもらえない8つのケースを紹介します。

傷病手当金の支給要件・受給額の目安
傷病手当金とは、業務外の病気やケガが原因で働けなくなった場合に、健康保険から手当金が支給される制度のことです。
この制度により、休業中に減少する収入の一部を補えるため、治療や療養に専念しやすい環境を整えられます。

傷病手当金の支給要件
傷病手当金を受給するためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
- 健康保険(被用者保険)に加入している
- 業務外の病気・ケガが理由で働けない
- 連続して4日以上休業している
- 休業中の給与支払いがないか、一定の額以下の支払いしかされない
まず、対象となるのは会社員や公務員のように、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)などの被用者保険に加入している人です。ただし、任意継続被保険者の期間に発生した傷病に対しては支給されません。
また、病気やケガによって医師から就労不能と判断されていることが必要で、診断書などによる医学的な判断が求められます。
さらに、連続して3日間の待期期間を含み4日以上仕事を休み、休業中に給与が支払われていないか、一定額の支払いしかされていないことが条件です。

傷病手当金で受け取れる金額
傷病手当金の支給額は、以下の計算式によって算出されます。
1日あたりの支給額=支給開始前12ヶ月間の各標準報酬月額の平均額÷30日×2/3
つまり、過去1年間における平均給与の約3分の2が支給額の目安です。なお、この計算式には賞与(ボーナス)は原則として含まれていません。
例えば、平均給与が30万円の場合、傷病手当金の1日あたりの支給額は約6,600円(1ヶ月あたり約20万円)です。

傷病別の支給状況|精神疾患(適応障害・うつ)が最大割合
主にどのような症状の際に、傷病手当金を受け取っている人が多いのでしょうか。主な傷病別の受給割合を下表にまとめました。
| 傷病 | 割合 |
|---|---|
| 精神及び行動の障害 | 39.15% |
| 新生物 | 14.49% |
| 筋骨格系及び結合組織の疾患 | 8.76% |
| 循環器系の疾患 | 7.32% |
| 損傷、中毒及びその他の外因の影響 | 6.54% |
出典:全国健康保険協会「令和6年度 現金給付受給者状況調査報告」
最も多い傷病は「精神及び行動の障害」で約40%の割合を占めています。また、50歳未満に絞ると50%を超える割合です。
具体的な症状としては、うつ病や適応障害などの精神疾患が挙げられます。
その他の傷病では、新生物や筋骨格系の疾患なども受給の要因になっており、どちらも40代以降から増加しているのが特徴です。
傷病手当金がもらえない8つのケース
傷病手当金は、一定の支給要件を満たしている場合にのみ支給される制度のため、病気やケガで仕事を休んでいても、要件に当てはまらない場合には受給できません。

ケース① 休業期間を有給休暇に充てている
休業期間中に有給休暇を取得している場合、その期間は「給与の支払いがある」と判断され、傷病手当金の対象外となります。
待期期間は有給休暇で対応し、4日目以降からは傷病手当金を受給すると、制度を有効活用できるでしょう。
長期間の休業が見込まれる場合は、有給休暇の使い方によって傷病手当金の受給可否が決まり、最終的な受取額が変わる可能性があります。
ケース② 同じ病気で通算1年6ヶ月受給している
傷病手当金は、同じ病気やケガについて支給開始日から通算1年6か月までが支給期間と定められています。
しかし、通算1年6ヶ月分の傷病手当金を受け取った後は、同じ病気で休業が続いても傷病手当金を受け取れないので注意してください。

異なる病気なら受給可能
傷病手当金の通算受給期間は傷病ごとに管理されるため、前回とは異なる病気やケガが原因の休業は、新たに1年6ヶ月を上限として傷病手当金を受給できる可能性があります。
病状が異なるか否かの判断は、医師の診断内容や健康保険組合の審査によって決まります。
ケース③ 出産手当金を受け取っている
出産のために休業している期間中は、原則として出産手当金が優先して支給されるため、同じ期間に傷病手当金を満額で受け取ることはできません。

ケース④ 障害厚生年金・障害手当金を受給している
障害厚生年金や障害手当金を受給している場合も、原則として傷病手当金との同時での満額受給はできません。障害年金などの支給額が傷病手当金よりも少ない場合には、その差額分が支給されます。
また、障害手当金を受給する場合は、傷病手当金の合計額が障害手当金に達するまで支給対象外となります。
具体的には障害手当金が100万円、傷病手当金の日額が5,000円だったとき、傷病手当金が100万円に達する200日間は受給できません。
ケース⑤ 労災保険で休業補償を受けている
業務中や通勤途中に被った病気やケガが原因で休業している場合には、労災保険による休業補償給付が優先され、基本的に傷病手当金は支給対象外となります。

なお、業務外の病気やケガで就業できない状態であっても、他の理由により休業補償給付を受けている場合も同様に傷病手当金は受け取れません。
ケース⑥ 雇用保険の失業給付を受けている
雇用保険の失業給付と傷病手当金は、対象とする人が相反している制度です。
- 失業給付:働く意思と能力があるものの、仕事が見つからない人を対象
- 傷病手当金:病気やケガで働けない人を対象
両制度は前提条件が正反対であることから原則として同時受給することができず、失業給付を受け取っている期間中は、傷病手当金の対象外となります。

ケース⑦ 退職後に初診を受けた
傷病手当金は、原則として健康保険に加入している期間中の傷病が対象です。
ただし、退職後すでに別の会社へ入社しており、新しい勤務先の健康保険に加入していれば、そちらの制度で傷病手当金が適用される場合があります。
初診日が在職中なら退職後も受給できる可能性がある
病気やケガの初診日が在職中であれば、以下の2点に該当している場合については退職後も引き続き傷病手当金の受給対象となります。
- 退職日まで継続して1年以上の被保険者期間※がある
- 資格喪失時(退職時)に傷病手当金の受給要件を満たしている
なお、退職日に出勤すると就業不能状態とは判断されないため、退職翌日からは傷病手当金を受け取れません。私物整理や会社支給物品の返却などが必要な人は注意しましょう。
※任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者または国民健康保険に加入していた期間を除く
ケース⑧ 休業開始から2年が経過している
傷病手当金の申請には期限が設けられており、就業不能と判断された日の翌日から2年以内に申請するのが原則です。
支給要件を満たしているケースでも、期限を過ぎると遡っての受給はできなくなります。

傷病手当金がもらえないときの対策
不服申し立て・再審査を受ける
傷病手当金の支給要件を満たしていると考えられるのに申請が却下された場合、決定通知を受け取った日の翌日から原則3ヶ月以内であれば不服申し立てを行うことができます。
不服申し立ての主な手順は以下のとおりです。
- 不支給決定後に地方厚生局の社会保険審査官に申し立て
- 社会保険審査官による審査
- 審査結果の通知
不服申し立ての請求は口頭・文書のどちらでも可能ですが、書面にて不服の理由を明記し、関連書類を添付することが望ましいでしょう。
必要に応じて、社会保険労務士などの専門家に相談することで、書類の完成度を上げることができ、審査の通過率を高められる可能性があります。

あらかじめ就業不能保険に加入しておく
傷病手当金がもらえない可能性も考慮して、民間保険に加入しておくことも有効な対策です。中でも、就業不能保険は休業中の収入減少への備えとして期待できます。
仮に傷病手当金が支給されないケースでも、就業不能保険に加入していれば休業中の収入補填が望めます。
また、傷病手当金と併せて受給できる商品も多いため、傷病手当金を受け取れる場合は、経済的な安心感をより高めることにつながります。
ただし、精神疾患が給付対象となるかは商品によって異なるうえ、給付までには60日以上の免責期間が設けられていることが一般的です。

まとめ
本記事では、傷病手当金をもらえない8つのケースや支給要件・受給額の目安などを解説してきました。
傷病手当金は長期休業時の経済的負担を軽減できる制度ですが、支給要件を満たしていなければ受給することができません。
特に、有給休暇中や他の手当を受給している期間は、不支給あるいは支給額が大きく制限される可能性があります。
傷病手当金がもらえるケース・もらえないケースをしっかりと把握しておくことで、万が一の休業時にも備えやすくなるでしょう。