退職金代わりに法人向け生命保険を積立するメリット・デメリット

退職金代わりに法人向け生命保険を積立するメリット・デメリット

企業にとって役員や従業員の退職金を支払うことは、大きな出費の1つになり得ます。退職金を準備する方法は複数ありますが、そのうちの1つが法人向けの生命保険を積み立てて退職金へ活用する方法です。

しかし、生命保険の積立が退職金へとつながる仕組みについては、理解できてない人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、法人向け生命保険を退職金に活用する仕組みやメリット・デメリット、主な保険の種類について解説します。

役員・従業員の退職金を無理なく準備したい企業の方々は、ぜひ参考にしてください。
この記事の要点
  • 法人が貯蓄型生命保険を活用すると、役員・従業員の退職金を計画的に準備できる
  • 貯蓄と万が一の保障を両立でき、企業と従業員双方にメリットがある
  • ただし、解約返戻金のピーク時期と退職時期が合わないと元本割れのリスクあり
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    監修者の紹介
    経歴・プロフィール
    東京理科大学理学部卒業。2003年、30歳で半導体製造装置大手企業を早期退職し、株式専業トレーダーに転身。これまでに年間最高売買代金350億円超、月間最高利益2414万円を達成。水野総合FP事務所代表。独立系ファイナンシャルプランナーとして個別相談、執筆・監修、講師、取材協力などマルチに活動。ライフプラン、資産運用、相続・資産承継といった幅広い相談内容に対応し、全国1000名を超える方から日本FP協会に寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。
    水野崇

    生命保険を役員・従業員の退職金代わりに活用する仕組み

    生命保険を退職金代わりにする仕組みとは、企業が貯蓄型生命保険を法人契約することです。法人が保険料を支払いながら、以下の契約形態で役員・従業員の退職に備えて資金を積み立てていきます。

    契約者法人
    被保険者経営者・役員・従業員など
    保険金受取人法人または被保険者(家族を含む)

    法人契約の生命保険を用いて積み立てられた解約返戻金や満期保険金を、退職時に退職金として支給します。または、保険契約そのものを法人から個人へ名義変更して引き渡すことも可能です。

    生命保険で退職金を積み立てることで、企業は計画的に退職金準備ができ、被保険者は万が一の保障を得られるため、双方にとって魅力のある制度と言えます。

    生命保険を退職金代わりに活用するメリット

    生命保険を退職金代わりに活用するメリットは、以下のとおりです。

    生命保険を退職金代わりに活用するメリット
    • 貯蓄と保障の両立ができる
    • 計画的に資金を積立できる
    • 損金算入できる

    貯蓄と保障の両立ができる

    法人向けの生命保険は、退職金目的の積立と同時に万が一の事態に対する備えも兼ね備えているのが特徴です。もし被保険者である役員・従業員が亡くなった場合、以下のような形で保険金を受け取れます。

    • 法人が受取人の場合:会社が死亡保険金を受け取り、遺族に死亡退職金として支給
    • 遺族が受取人の場合:家族が死亡保険金を直接受け取る

    貯蓄・保障の二面性を持っているため、退職金の支払い原資を確保しつつ、従業員やその家族の安心にもつながるのが生命保険の強みです。

    なお、受取人を法人にするか被保険者(役員や従業員)にするかで、経理処理が変わることは把握しておきましょう。

    計画的に資金を積立できる

    退職金を支払うことは一度に多額の支出が発生するため、企業にとっては資金負担が大きくなりがちです。しかし、生命保険を活用すれば定期的に積み立てる仕組みを構築でき、資金準備を計画的かつ着実に行うことができます。

    ポイント
    必要なタイミングで退職金の支払い原資を確保するためには、保険満期や解約返戻金が最も高くなる時期を退職予定時期に合わせて保険を契約することが大切です。

    退職時期が事前に判明している役員や従業員に対しては、それぞれの退職年数までの期間を考慮して適切な保険を選びましょう。

    損金算入できる

    法人が契約する生命保険は、契約形態や保険商品によっては支払った保険料の一部または全額を損金算入することが可能です。

    特に、税務上の取り扱いは保険商品の解約返戻率によって大きく左右されます。

    注意点
    解約返戻率が50%以下の場合には、保険料の全額または大部分を損金として処理できますが、50%を超える場合では保険料の多くが資産計上され、損金算入は制限されます。

    また、保険金や解約返戻金を法人が受け取った場合、それらは原則として益金に算入されるため、将来的には課税対象となる点にも注意が必要です。

    それでも、支払時点で一時的に納税負担が軽減されることは、企業の資金繰りの観点ではメリットとなるでしょう。

    参照:国税庁「定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

    生命保険を退職金代わりに活用するデメリット

    生命保険を退職金代わりに活用するデメリットは、以下のとおりです。

    生命保険を退職金代わりに活用するデメリット
    • 退職時期によっては退職金額が低下する
    • 保険料の支払いが経営の資金繰りに影響する可能性がある

    退職時期によっては退職金額が低下する

    生命保険の解約返戻金は、契約年数に応じて徐々に増加するのが一般的です。契約してから短期間で解約すると元本割れのリスクが高まるため、数年以内での退職がわかっている場合などは退職金代わりとしては利用しにくいでしょう。

    また、返戻金が一定期間後にピークを迎え、以後は返戻率が低下していく保険商品も存在します。

    注意点
    退職時期と返戻金のピーク時期がずれてしまうと、想定よりも退職金額が少なくなる可能性があります。

    契約にあたっては、退職予定時期に解約返戻金のピークを迎えられるような商品を選ぶことが大切です。

    保険料の支払いが経営の資金繰りに影響する可能性がある

    法人契約の生命保険は、月単位または年単位で継続的に保険料を支払う必要があります。

    資金に余裕のない企業や景気変動を受けやすい業種の場合、保険料の負担が経営の資金繰りに影響するかもしれません。

    例えば、況により売上が落ち込んでしまうと、保険料の支払いが重荷になることも考えられます。その結果、予定より早い解約や契約内容の見直しを迫られるケースもあるため、掛金は無理のない範囲で設定するのがポイントです。

    退職金代わりに生命保険を使う際の注意点

    退職金代わりに生命保険を使う際の注意点は、以下のとおりです。

    注意点
    • 名義変更により課税されるケースがある
    • 退職金規程との整合性を図る

    名義変更により課税されるケースがある

    法人が契約者となっている保険を退職金の原資として従業員や役員に支給する場合、保険契約の名義を法人から被保険者本人へと変更するケースがあります。

    注意点
    このとき、名義変更時点の解約返戻金相当額と帳簿上の資産価値(簿価)の差額を「みなし贈与」や「一時所得」とみなされ、課税される可能性があります。

    税務処理を誤ると、後の税務調査で追徴課税の対象となるかもしれません。保険の解約や名義変更を行う際は、事前に税理士などの専門家に相談しておくことが不可欠です。

    退職金規程との整合性を図る

    生命保険の満期金や解約返戻金を退職金として支給するためには、企業の退職金規程でその旨を明文化しておくことが求められます。

    注意点
    社内規程に具体的な根拠がないまま退職金を支給した場合、税務調査の対象になる恐れがあります。

    退職金の支給に関して、税務職員から「合理性に欠ける」と判断されると、損金算入が認められないかもしれません。

    法人向け生命保険を退職金代わりとして利用する際は、保険契約だけでなく、社内制度も含めた整備が重要です。

    退職金代わりにおすすめの法人向け生命保険

    退職金代わりにおすすめの法人向け生命保険は、以下のとおりです。

    退職金代わりにおすすめの法人向け生命保険
    • 逓増(ていぞう)定期保険
    • 長期平準定期保険
    • 養老保険

    逓増(ていぞう)定期保険

    おすすめポイント
    • 5〜10年程度で退職する経営者・役員向き
    • 死亡保険金が基準額の最大5倍まで増加
    • 解約返戻金はピーク後に大きく減少する傾向
    • 契約者貸付制度により一時的な資金調達も可能

    逓増(ていぞう)定期保険は、保険期間の経過に伴って死亡保険金が基準保険金額(契約時点の保険金)の最大5倍まで増加していく定期保険です。企業が成長するとともに、手厚い保障を備えることができます。

    ポイント
    この保険の特徴は、契約から5〜10年ほどが経過すると、解約返戻金がピークを迎える商品が多い点です。5〜10年での退職が決まっている経営者・役員向けの退職金として活用しやすいでしょう。

    ただし、解約返戻金はピークを迎えた以後に大きく減少する商品が多い点には注意してください。

    退職するまで長期間ある場合や、退職時期がそもそも決まっていない経営者・役員には向きません。

    なお、契約者貸付制度を備えているため、解約返戻金の範囲内で借入できるメリットもあります。急な資金需要の際にも、解約せずに資金調達できる点は見逃せません。

    長期平準定期保険

    おすすめポイント
    • 退職までの期間が長い経営者・役員向き
    • 満期が95~100歳で終身保険並みの長期保障
    • 保険金額・保険料が契約期間を通じて一定

    長期平準定期保険は、長期にわたって保障を継続できる定期保険です。

    ポイント
    解約返戻金は緩やかに上昇していき、契約から数十年後にピークを迎えるのが一般的なことから、退職までの期間が長い経営者・役員に対する退職金の手段として活用できます。

    また、保険の満期は被保険者が95〜100歳という商品が多く、保険金額・保険料が契約期間を通じて一定に保たれる点も魅力的。定期保険でありながら、終身保険のような保障を確保することができます。

    逓増(ていぞう)定期保険と同様に契約者貸付制度があるため、有事の際の資金調達手段としても利用できます。

    養老保険

    おすすめポイント
    • 従業員向けの福利厚生として活用
    • 死亡時・満期時どちらも給付あり
    • 保険料の1/2を損金算入することが可能

    養老保険は、生存保障・死亡保障の両方を兼ねている定期タイプの保険です。死亡時は死亡保険金を、満期時は満期保険金を受け取ることができ、従業員向けの福利厚生として活用されます。

    ポイント
    保険の満期は被保険者の退職時期に設定して、満期保険金を退職金の原資に充てるのが一般的。仮に被保険者が亡くなった場合にも遺族に死亡保険金が渡るため、残された家族の経済的負担は軽減されるのが特徴です。

    また、以下のように受取人を分けるハーフタックス方式により、保険料の1/2を損金算入できます

    保険金の種類受取人
    死亡保険金被保険者の遺族
    満期保険金法人

    ただし、税務上の取り扱いは保険の名義人や受取人の設定によって異なるため、契約時には税理士などの専門家と相談することが望ましいです。

    まとめ

    本記事では、法人向け生命保険を退職金に活用する仕組みやメリット・デメリット、おすすめの生命保険の種類について解説しました。

    退職金を生命保険で積み立てることで、退職金の原資だけでなく、万が一の保障も確保することが可能です。また、計画的に積立を行うため、必要な退職金を着実に準備できる点もメリットです。

    退職金の活用に向いている法人向け保険としては、逓増(ていぞう)定期保険・長期平準定期保険・養老保険などが挙げられます。

    それぞれで向いている人や保障内容が異なるため、目的に沿った保険を契約して退職金準備に活用しましょう。

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